スピーキング力を伸ばす

 

スピーキング能力はどのようにすれば向上するのか。

 

これは日本人英語話者にとっては永遠のテーマではないでしょうか。

 

この1カ月間、第二言語習得(SLA, Second Language Acquisition)の本を集中的に読み、次の疑問への理論的なヒントを探してみました。

 

・どうのようにすれば英語を話せるようになるのか?

・その効果的な練習方法とは?

・どのようにすれば英検1級レベルを超え、その上を目指せるか?

 

今回、読んだSLA関係本は次のものです。

 

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 ちなみに、これらの本はだいぶ前に買った本で、今回新たに買ったものではありません。過去に読んだときよりもずっとレベルが上がった今(と個人的に思っている(笑))、当時とは違う読み方が出来るのではないかと思い、様々な情報を吸収するべく、改めて集中的に読みました。

 

これらの内容と自分の経験を踏まえ、スピーキング力を身につける方法、そして、向上のための方法を考えていきたいと思います。

 

0) まずは基礎となる文法と語彙を覚える

 

自分の思い描くレベルで英語を話せるようになりたい、この目標を達成するためにまず行わなければならないことは、文法と語彙の習得です。これは基礎中の基礎ですね。ただ、文法の学習を終え、頑張って色々な文法項目を覚えても、それだけでは英語を話せるようになりません。基礎的な文法と語彙をおさえた上でアウトプットの練習が必須となります。

 

文法に明示的に頭で理解して覚えることができれば、英語を発話する上で①正しい英語を話そうと努めることが出来ます。そして②自分の間違いに気づくことが出来るようになります。これが非常に大事です。

 

実際、自分で英文を発した直後に「あ、今文法間違った」と気づいたことのある人も多いのではないでしょうか。この「気づき」が使える文法能力を育てる上で非常に大切です。

*SLAでは、文法の習得について実に様々な見解があります。どのように習得されるのか、各文法項目を暗記的に覚えても習得されないのではないか、などなど。非常に難しく、興味深い分野ですね。

 

1) 大量のインプットが必要

 

これは有名な話ですね。大量の英語のインプットがベースとなり適切なアウトプットにつながります。インプットが不十分な状態で会話の練習をすることは難しいですよね。インプット不足な状態では、和文直訳的な英文が多くなり、また、発した英文が適切かどうかの判断も出来ません。良質な英文を、リスニングとリーディングの両方から大量に吸収することが必須です。但し、これも有名な話ですが、理解可能なもの、全体のうち分からない部分が多くないもの、をインプットすることが大事です。難しすぎるもの、意味不明なものではインプットも何もないですよね。少しだけ歯ごたえのあるものから初めて、徐々にステップアップする、これが大事です。毎日一定量の英文・英語音源に触れる、これが大切です。特に、中級から上級へステップアップするためには、自分が考える以上に大量の英文をインプットすることが必須となります。

 

大量のインプットの方法は人それぞれだと思います。たくさんの本を読むことでインプットするタイプの人、たくさんの英語を聴くことでインプットするタイプの人、あるいはその両方をバランスよく行う人。どれでも良いと思います。自分に合う方法で大量のインプットに励みましょう。 

 

2) 学習時間におけるインプットとアウトプットの割合は?

 

これは色々な意見があるようです。でも、これに絶対的な正解はないですよね。その時、自分がどの能力を向上させたいかにもよります。ただ、いわゆる典型的な(?)日本人の場合、かなり意図的にアウトプットの練習を課さないと、学習のほぼ全部がインプットになりかねません(笑)。また、比較的若い学習者の中には、十分な基礎を築く前にスピーキングの練習ばかりする、というケースも結構あるようです。ある度英語力がある場合(英検準1級とかTOEIC800点以上)であれば、集中的にアウトプットの練習を行う時期を設ける、あるいは定期的に設ける必要があると思います。ただ、そのような集中期間を除いた場合、英語学習はやはりインプットをメインとし、アウトプットは全体の学習量の2~3割程度とすべきです。良質な、かつ自分に適した英語を出来る限り多く吸収する、これが日々の英語学習のベースとなるべきです。

 

 3) スピーキング向上のために具体的にどう学習するか?

 

スピーキングの練習と言えば、瞬間英作文が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。瞬間英作文は英語の型(語順)と文法、つまり英語の文の構造とはどんなものかを体にしみ込ませるのに向いていると思います。初級レベルで、自分の英文を作り出すことが全く出来ない、あるいは出来ても文法的にかなり怪しい文しか作れない、といったレベルの人は瞬間英作文を集中的に行うことで、英語の型、正しい英語の語の並びを頭に叩き込むことが出来ると思います。

 

瞬間英作文については過去に記事を書いていますので参考にしてください。

ohmukuneigo.hatenablog.com

 

 

では、瞬間英作文はどのように行えばよいか?たいていの場合、テキストの左に和文、右側に英文が載っています。和文を見て瞬間的に英語に直す、ですね。色々な人たちが解説されている通りですが、過去の自分の失敗を踏まえ、個人的に強調したい点は次の通りです。

 

 

①最初は音声をきちんと聞くこと

 

発音を体系的に学んだことが無い方は、「英語耳(松澤喜好 (著))」などでしっかり練習しておきましょう。ある程度のレベルになると気付くことが多いですが、発音が悪いとコミュニケーションの大きな障害となります。また、発音が悪いとリスニングとスピーキングのレベルがある程度以上に向上しません。英会話学校などでは、生徒のつたない発音でもしっかり聞き取って、Good などと言ってくれますが、ビジネスの現場などでは、発音がまずいと相手にしてもらえない場合もあります。 

英語耳[改訂・新CD版] 発音ができるとリスニングができる

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②発話時は「誰かに伝えている」というイメージを大事にする

 

ひとつの英文をある程度スムーズに言えるようなった後は、誰かにその英文を伝えているというイメージをもって発話するようにします。先にも述べましたが、アウトプットは自分が伝えたい内容でなければ習得されません練習用の英文であっても自分の言葉で話しているイメージを持つことが重要となります。では、どのようにすれば例文を自分自身のこととして少しでも実感できるようになるか。瞬間英作文の例文は、次のようにいくつかパターンに分けることが出来ると思います。

 

1) 自分が実際に使うかもしれない英文

 

和文: メニューを見せてもらえますか?

英文: Could I see the menu, please?

 

自分が使う場面を比較的イメージしやすいですね。実際に自分がレストランにいることをイメージして発話することが大事です。

 

2) 英語の型・文法の習得が大事な英文

 

和文: 父は私に時計をくれた。

英文: My father gave me a watch.

 

これは完全に英語の型を覚えるための練習素材ですね。この例文を実際にそのまま使うケースはあまりないでしょう。ですが、giveの後ろは「(人)に(もの)を」という語順になるということを覚えるのは非常に大切です。例文ごとにキーとなるポイントをきちんとふまえた上で練習をしましょう。

 

3) 使えそうな表現を含む英文

 

和文: 彼女が嘘をついたので腹がたった。

英文: I was angry because she lied.

 

日常でも使いそうな例文ですね。何回か発話して、つっかえずに言えるようになった後は、「自分の場合だったら」に置き換えて発話をしてみましょう。例えば、「彼女」ではイメージがわきにくいので、身近な人物に置き換えてしまいましょう。友達にリカという子がいれば、

 

I was angry because Rika lied.

 

のようにしたほうがイメージを持ちやすいですね。単語レベルに限らず、「自分だったら」という場面を具体的に想定して、「どんどん自分だったら」の例文に変えて発話の練習をしていきましょう。

 

4) 一言二言加えてみる

 

和文: 昨日は疲れていた。

英文: I was tired yesterday.

 

自分が実際にその状況にあることをイメージして発話した上で、この後に、1~2文を適当に付け加えます。例えば次のような感じです。

 

I was tired yesterday. I had a lot of things to do.

 

とか

 

I was tired yesterday, but I didn’t sleep well last night. I’m really sleepy now.

 

みたいな感じです。

 

自分の思うままに付け加えてみましょう。「自分だったら」というイメージがしやすくなると思います。

 

大事なのは、英文を発話する場合、自分の話している内容が頭の中でイメージ出来ている必要がある、ということです。瞬間英作文では、練習を行うときに、自分の世界に入りこんで、この部分を特に意識しなくても上手くやることが出来る人がいます。このような人たちは瞬間英作文を通してどんどん話せるようになっていきます。その一方、和文をただ直訳的に英訳し、発話時にその英文のイメージを描くことが出来ず、機械作業的に「和文→英文」の置き換えをしている人たちは、残念ながら瞬間英作文で効果を得ることは出来ません。発話しているときにイメージが伴っているか、これがとても大切です。

 

ただ、それでも、瞬間英作文では次のような問題点があると思います。

 

・日本語が介在することから流暢性が阻害される可能性

和文直訳的な英文の発話につながる

・まとまりのある複数の英文を話す練習が出来ない

 

また、型や文法の習得だけであれば、音読を繰り返す「只管朗読」のほうが良いかもしれません。僕の過去の学習を振り返ると、瞬間英作文よりも音読を繰り返したことのほうが効果的だったような気もしています。音読を繰り返し、暗唱レベルまで持っていくことのできた英文は、実際の会話で上手く使えていると感じています。ですので、個人的には、瞬間英作文が絶対という立場ではありません。

*只管朗読とは、英語の達人であった國弘正雄氏が提唱していた方法で、英文をひたすら音読する(最低でも100回以上)ことで英語を学習するというものです。

*瞬間英作文と音読、どちらが最適かという問題の明確な答えは出ないでしょうね。個人差によるところも大きいと思います。でも、これについては今後も調べていきたいと思っています。SLAの理論、自分の過去の経験、知人の経験、などを基にまとめたうえで、近いうちに記事にしたいと思います。特に、音読が今までの自分の英語力の向上にどう役立ってきたかについて一度徹底的に振り返り、纏める予定です。

 

國弘流英語の話しかた

國弘流英語の話しかた

 

  

 

中級から上級レベルを目指す上では、次に述べるような練習を大量に繰り返す必要があると思っています。それは、一人Q&A、②独り言、③15/45 Exercise、④オンライン英会話、⑤暗唱、だと思っています。

 

① 一人Q&A

 

これは、英語の質問を英語で返す、という練習です。英語の質問がたくさん載った本が何冊か販売されています。その中で僕が使ったのは「英語でスラスラ話すための自分事典(吉富昇(著))」です。 

英語でスラスラ話すための自分事典

英語でスラスラ話すための自分事典

 

 

この本では、英語の質問が最初から最後まで続きます。基本的なことを問う質問文から、少し考えなければ答えられない質問文まで様々です。

 

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これをCDの音声(質問文)を聞きながら、どんどん回答していきます。このとき、本の模範解答は1文ですが、2から3文で回答するようにします。言いたいけど言えない、という日本語の表現はウェブで調べて覚えてしまいましょう

 

一通り、本を最後まで終えた後は、Fast Speedの音声がありますので、本の最初から最後までを何回か繰り返します。そうすることで、自分のことについて英語で一通り話せるようになると思います。個人的には非常に良い本だと思っています。ただ、模範解答の例が少ないのが残念な点でしょうか。ただ、本を手にした人たちがどのような回答をするか考え、それをすべて掲載することは不可能ですのでしょうがないのかもしれません。

 

 

② 独り言

 

これは、そのままの意味です。空いた時間でその時に思ったことをぶつぶつつぶやきます。そして、言えない表現があれば調べて自分のものにしてしまいましょう。実際に声に出して言えないような状況でも、頭の中で英語にするクセを付けるといいと思います。脳内で英文を作るだけでも、アウトプットのリハーサルになると言われています

 

 

③ 15/45 Exercise

 

ある英語の例題に対して、15秒程度(TOEFLのための練習でなければ正確に測る必要はありません)頭で何を話すかを考え、そして45秒程度の英語で話す、という練習です。この練習により、まとまった英文を話すことが出来るようになります。また、流暢性の向上を目指す非常に良い練習となります。個人的には一番好きな練習方法で、毎日の日課にしています。

  

TOEFLのスピーキングセクションを利用して学習するのが良いと思いますが、僕はTOEFLのライティングセクションの問題を使って練習をしています。例えば次のような問題を読んで、15秒考えて、45秒程度話します。

 

What is a very important skill a person should learn in order to be successful in the world today?

 

Some people prefer to work for a large company. Others prefer to work for a small company. Which would you prefer?

 

15秒考えて、というのが基本ですが、質問文を読んだら何も考えずに話し始めるのもアリです。やり方は練習を重ねるうえでどんどん自分流にアレンジすればよいと思います。また、話すときは、3回程度、続けて話してみるのがお勧めです(45秒程度x3)。面白いくらい、毎回違った発話になると思います。そして、回数を重ねたほうが流暢性が増していることに気づくと思います。話した英文はICレコーダーに録音して聞くと効果が上がります、自分の英語を客観的に聞いて反省出来るのでおすすめです。

そして、「言いたいけど言えない」という日本語の表現はウェブで調べます。そしてその調べた表現を用いて、もう一度必ず練習をしましょう。調べた表現を自分で実際に使うことで、その表現を自分のものにすることが出来ます(これ、非常に大切です)。

 

 

④オンライン英会話などの実際の会話

 

実際に英語を話せる人を相手に、英語を話してみる機会をもつことは必須です英語で自分が伝えたい内容をきちんと話せるようになるためには、自分の思ったこと、伝えたい内容を、実際の会話の場で話そうと試みることを欠くことは出来ません。そして、そこからフィードバックを得ることが理想的です。今は、英語の話相手は簡単に見つかる時代です。オンライン英会話やSNSなどですぐに相手を見つけることが出来ます。これらを利用しない手はありません(僕が大学生の時はこのようなものはありませんでした。今の若い人がうらやましいです)。

 

ただ、このための時間を見つけるのが大変な場合もあります。さらに、英語のレベルがあまり高くないうちにオンライン英会話でフリートークなどをたくさん行っても、同じパターンの構文を使いまわすことに終始してしまったり、正しくない構文や文法ばかりを使うことで、不正確な英語の発話グセがついてしまうかもしれません。実際にオンライン英会話等で話す訓練に取り組む前には、独力での訓練を十分に積むことが大切です。ある程度英文を口頭で作れるようになった後に、積極的に英語を話す場を持てば、会話→フィードバック→レベル向上、の好循環が生まれると思います

*フィードバックとは、相手からもらうものだけでなく、自分が持っている明示的知識(知っている文法知識など)から、実際に話した直後に「あ、今間違って話したな」と気づくことも含んでいます。

 

 

 ⑤ 暗唱

 

これは、絶対に必要という練習ではないと思いますが、英検1級の2次を受ける方で、スピーキングは大の苦手、という方には大事な練習だと思います。僕個人、英語を話すのは非常に苦手でした。英検1級も1次試験は自信があったのですが、2次を受けるのが嫌でしばらく受験から遠ざかっていた時期もありました(笑)。もしこのような方がいれば 初めの練習・訓練として、自分で作ったスピーチを少なくとも10本程度、完全に暗唱できるまで音読しつくすことをお勧めします。暗唱をすることで、まとまった分量の英語を話すことに慣れることが出来ます。この「慣れ」は英語を話す機会の少ない学習者には非常に大切です。僕の場合、20本程度のスピーチを暗唱できるところまで持っていきました。そして、暗唱 → 一人Q&A(一人でスピーチをし、質問を想定して勝手に回答する)、を何度も行うことで2次試験を突破できました。

 

また、いわゆる名文を覚えるのは教養という意味で面白いかもしれません。僕はやったことはないのですが、大統領演説とか、スティーブ・ジョブズのスタフォード大学での卒業スピーチなどを暗唱することで、色々なことが吸収出来るのではないかと思います。

 

以上、スピーキングの練習に取り組む場合の心構えと、いくつかの練習方法を自分なりに解説してみました。今後は、各々の内容につきもっと深いところまで説明をしていきたいと思います。また、音読についてはぜひj近いうちに思うところを綴りたいと思っています。

また、この記事は現時点での見解を思うままに綴ったもので、自分で読み返しても、少々雑なところや甘いところが正直多々あります。時機をみてリライトしたものを新記事として掲載する予定です。 

 

Thank you.

Ohmukun