英語学習は不要になるか

 

最近の翻訳・通訳機器の進歩は目覚ましいですね。単文レベルの自動翻訳はかなりのレベルまで到達しているようです。では、このテクノロジーの進化によって英語の勉強は不要になるのでしょうか。色々な意見があると思いますが、僕個人の今の結論としては、

 

 

決して不要にはならない、それどころかますます重要になる。

 

 

というものです。

 

 

プログラミングなどの知識には詳しくないのですが、どうやらディープラーニングという技術により、機械翻訳の能力は劇的に向上しているようです。確かにGoogleなどの自動翻訳の精度は高くなっているようですね。僕はドイツの顧客とやり取りを多くしているので、よくドイツ語のマニュアルを手にすることがあります。そのマニュアルをGoogle翻訳で「ドイツ語→英語」に翻訳すると、専門用語を除けば大体意味の分かる英文を手にすることができます。「Google翻訳すごいなあ」となるわけです。もっとも、ドイツ語と英語の距離が近いことが高精度で翻訳できる一番の理由で、「日本語⇔ドイツ語」で翻訳ボタンを押すとほぼ100%意味不明ですが(笑)。

 

 

日々仕事で英語を使っていて思うのは、やはり、直接、自分の言葉で英語を話し、相手と直接のコミュニケーションをとることは非常に大切だということです。お互いが自分の言葉で英語を話し、言いたいことを伝えあう、これが非常に大事。これを通じて相手との距離を縮めることが出来ますし、細かいニュアンスを含め、お互いのことを本当の意味で分かりあうことが出来るようになります。多少文法を間違えたり、不適切な単語や構文を使ってしまっても、それで会話が破たんすることはほぼありません。これが機械翻訳だと相手は怪訝な顔をするかもしれませんが、自分の言葉で会話をしていれば、相手の表情やこれまでのやりとりから、大きな問題になることはほぼないです。やはり英語はコミュニケーションの道具だということですね。海外の方が訪問された際、食事や飲み会に行くことがありますが、ここでの会話はビジネスを円滑に進める上で非常によい機会となります。このような場で、通訳機械を通してコミュニケーションを取り、相手との距離を縮める、というのは想像が出来ません。自分の言葉で英語を話し、直接語り合う、これが重要であり、絶対条件だと思います。

 

 

また、日々のビジネスを通じて思うのですが、諸外国(ヨーロッパやアジア諸国)の方々は、概して、英語で簡単なやりとりをする能力に長けている気がします。確かに母国語なまりはありますが、それでも会話のポイントは心得ているようで、それほど高度の単語や文法は使わなくても、英語で十分な意思疎通を図る能力のある方が非常に多いように感じます。もちろん、欧州の方々は英語との言語的距離が近く、習得しやすいというのもあると思いますが、アジア諸国、特に東南アジア諸国の方々も、非常に上手な英語を使う方が多く、会話に苦手意識を持っている方は少ないように感じます。このような中で、日本人のみが英語での会話に苦手意識を持ち、通訳の機械片手にコミュニケーションをとるようでは、相手と十分に深い理解に達することは出来ないでしょう。ものすごく上手い流暢な英語が必要だと言っているわけではありません。英語で直接相手とコミュニケーションをとれること、これが非常に重要だと感じています。

 

 

また、若い人たちは、これから海外で勉強するチャンスが十分にあると思いますが、英語が出来なければそのチャンスを逃してしまうことになるでしょう。高等教育や研究の現場では、翻訳機・通訳機などに頼っているようでは話にならないでしょう。良くも悪くも、英語が出来ることで、本当に様々な情報を瞬時に獲得することが出来ます。それらが翻訳されるのを待っていたり、翻訳機に頼っているようでは世の流れから徐々に遅れることになり、どこかの時点でチャンスを逃したことに気が付くことになるかもしれません。翻訳機の訳文は間違っているかもしれませんしね

 

 

英語力は、一部では、機械が代替してくれるので英語の学習は不要になる、なんて意見もありますが、実際にはその真逆と思います。英語を、実際にコミュニケーションの道具として使いこなせる人と、そうでない人の格差は今以上に広がっていく、というのがこれからの社会ではないでしょうか。相応の英語力を出来るだけ早く獲得し、英語で何かを学び、英語力+αのスキルを身につける、これがこれからの時代に必須の流れとなるのではないでしょうか。

 

 

蛇足ながら最後に。

 

日本人は本当に英語に対しての苦手意識がすごいですよね。そして、学校の英語教育、ひいては入試英語が悪いから、ということで、英語4技能化による入試制度の導入が近づいています。ですが、どうなのでしょうかね?日々の英語学習の中で、リスニングやスピーキングの比重を大きくするのは大事だと思います。ただ、僕はいわゆる「訳読のみ」の学校教育で育って来ました。それでも、英検1級を獲得し、日々のビジネスで英語でやり取りをすることが出来るようになりました。また、TIME誌などもそれなりに読めるようになりました。今までの自分の英語学習で何が重要だったか。振り返ってみると「文法」をきちんと学習したことだったと思います。僕は高校1年の春に、徹底的に文法を自習しました。チャート式というテキストを学校の進度を無視して、徹底的にやり込みました。そして、例文を音読しまくりました。その結果が、後にリスニング、スピーキングの学習を行うための屈強な土台になってくれたと思っています。英語4技能化時代を迎え、学校の英語の授業がどう変わっていくのか分かりませんが、うわべだけの会話練習を増やすだけでなく、きちんと文法の習得にも時間を掛けてくれれば良いと切に願っています。僕のいう文法とは、決して4択問題のことではありませんよ(笑)。きちんとした基礎が身につく英語の授業、そして個々人の学校外での圧倒的な努力、この2点がキーポイントだと思います。学校内だけの英語教育に過度に期待し、学校外での個々人の努力を促すことがなければ、10年後の日本人の英語力も相変わらず伸びることがなく、そしてまた「英語教育改革を」と叫んでいるかもしれませんね

 

 

Thank you.

Ohmu-kun