英語試験の4技能化

 

ついに大学入試の方針が定まったようです。

 

英語は「マーク」と「民間」必須に センター後継試験:朝日新聞デジタル

 

 

英語関係者は皆、さまざまな意見を持っているでしょうね。ネット上でもさまざまな見解が表明されています。ここで、現時点での個人的な見解を述べておきたいと思います。

 

① 4技能化の促進自体には賛成です。英語はそもそも「4技能」をある程度バランスよく使えることが必要です。学校の授業で、読解に過度に特化した授業を見直し、4技能のバランスを図った授業がより推進されるという意味であれば、賛成するに決まっています。

 

② 大学入試にスピーキングとライティングの試験を課すのはOKですが、それを外部試験に任せることには疑問しかありません。性急な導入は不要に感じます。

センター試験自体、まだまだ改善は可能ですし、大学入試センターにはCBTベースで、日本の受験生事情に適したスピーキング及びライティング試験を新たに開発し、センター試験の一部に組み込む能力はあるのではないでしょうか。なぜ、外部試験に最初から頼ろうとするのか?大人の事情を感じざるを得ません。

外部試験で相応の結果を出した生徒を優遇するのはよいと思います。例えば、英検準1級や、TOEFL70点などを獲得した生徒に英語の入試を免除するのは有りですよね。現在も一部大学で実施されています。ですが、全生徒に外部試験を課すのは何を考えているのかさっぱり分かりません。

 

③受験生の負担が大きすぎるように思います。受験生は在学中に数度、外部試験を受けなければなりません。これは時間的にも経済的にも大きな負担です。恐らく、外部試験の有力候補は英検になると思いますが、2度受ければ結構な費用が掛かります。もしTOEFLなら2回受ければ、5万円を超える出費となります。一般的な家庭には痛すぎます…

 

④各科目の勉強のバランスが英語に偏り過ぎてしまうのでは、という懸念もあります。

英語ばかり勉強して理数系の勉強時間が著しく減るとしたら、大きな損失となるでしょう。英語はもちろん大事なのですが、これからの時代を考えるなら、理数系の知識を徹底的に学ぶことのほうが大事ではないかと個人的には考えています。

 

⑤今回の制度変更は、難関大学を目指す生徒のみを対象として検討されているような印象を受けます。受験生全体の英語力を見れば、センター試験の平均点は110~120点程度。このレベルですと、英検なら準2級程度、TOEFLやIELTSには全く太刀打ちできない、といったレベルだと思います。やはり、全受験生に対し、大学共通テストと民間試験の両方で一律に判定する必要はありません。受験生のレベルはピンキリです。

従来通り、大学共通テストで英語の基礎レベルを測り、スピーキングやライティングをどう評価するかは各大学に委ねるべきです。私立大学であれば、各大学が各々のレベルに応じて問題を考えればよいですし、国立大学であれば、二次試験でスピーキングとライティングの試験を必須にすれば事足りるように思えます。

 

⑥そもそも論ですが、英語を使えるようになるかどうかは、「個人の努力」によるものです。文科省が言う英語の4技能化推進は、どうも日本の英語教育を語るうえでの悪い癖が出ているように感じます。つまり、

 

受験さえ変われば英語が出来るようになる

 

というやつです。

 

これは一部正しいと思いますが、それがすべてではないはずです。基本的に英語を使えるようになるかどうかは「個人の努力次第」と考えています。学校の英語の授業時間数だけで英語を流暢使えるようになるなんで絶対にありえませんそこをはき違えている嫌いもあります。また、当然ですが、すべての生徒が英語を使えるようになる必要もありません。

 

何度となく教育改革は行われてきていますが、常々感じるのは、国として、どういう教育を子どもたちに与えたいのかというコンセプトが、その時々の社会的な情勢によって惰性的に決まっている感じがします。国としての一貫した哲学を感じ取れません。 また、大学入試を通じて、時の文科省が定める学力観を必ず測定されなければならない、という悪習の連鎖を感じます。

 

大学入試は単なる通過点

 

大学入試の制度(制度改革)に子どもたちが振り回されることがないことを願ってやみません(まだ間に合います!)。

 

 

Thank you.

 

Ohmukun